2016/08/17

さち その1

さちは神奈川県のブリーダーから譲り受けた。彼らは日本犬保存会のブリーダーで主に柴犬や紀州犬の繁殖と出展を手掛け、仲間うちで繁殖用から除外した仔犬を人づてや一部ネット上で販売するほか、仔犬を譲った先で事情があって飼えなくなった犬やおそらく使わなくなった台雌の里親も不定期にネット上で募集している。私はそれを見てコンタクトをとり、柴犬か紀州犬の成犬で里親が必要な犬を引き取って飼いたいと申し出た。しかしその時はそういう犬はなく、仲間で歳とったから犬を減らしたいと言っていたブリーダーを紹介された。

早速連絡すると次の土曜日に見に来るようにと言ってくれ、結局手放したい成犬はないので繁殖用に残してある三腹分くらいの三ヶ月前後の仔犬たちの中から選ぶことになった。今は気性で選び気をつけて社会化すれば大丈夫じゃないかと思うが、当時は柴犬の雄といえば街で会う他の雄犬にそれが義務であるかのように吠えるという印象だったので、本当は雄が欲しかったが雌を飼うことにしていた。最初に抱き上げたのがさちで、そうされても全く落ち着いていたので、結局母親を見ることも他の仔犬を触ることもせずその犬に決めた。その時生後99日目だった。既に「扇の幸姫」という名で登録され、さっちゃんと呼ばれていた。良い名と思ったのでそのまま家でもさちと呼ぶことにし役所にも「さち」で登録した。

家に来た翌日のさち


玄関の土間にケージを置き、板敷には古い絨毯を敷き詰めた。ケージは前からあった長辺90cmのもので、大きすぎた。朝、ケージの扉を開けようとすると鉄砲玉のような勢いで飛び出してくる。玄関に行くと板敷に跳び上がりそこからケージの屋根に跳び上がり土間に跳び下りることをダンダンダンと繰り返す。餌を入れた食器を持って行くと跳びついて力づくで取ろうとし、マテもへったくれもない。

https://youtu.be/V5PuB7CYUx8

2016/07/21

「豆柴」

日本の都会の住宅事情では犬は同じ犬種でも体格の小さいほど求める人が多く、従って高く売れる。だから人気のある犬種を繁殖する金儲け主義のブリーダーはまた、少しでも小さい犬を作ろうとする。そのため東京では柴犬に限らず、多少とも人気のある犬種では標準よりかなり小さい個体が増えている。

いや、犬種標準に合致しない犬を作って売るからといって金儲け主義とは限らない。良い家庭犬や猟・競技その他の用途の犬の供給を目標とするブリーダーもあるから。しかしまず金儲け主義が多いとみていいと思う。「豆柴」の作出では歴史のあるブリーダーが二軒あり、それらの系統のものなら成犬になったらでかくなったということはないと思うが、露店で売る「大きくならないミニうさぎ」同様のものを売るところがとても多い。

いずれにしろラブやゴールデンやコリーやジャーマンシェパードならまだしも元々小さい犬種でさらに小さい個体を作ろうとすることには無理がある。全体のバランスが崩れるほか、手っ取り早く小さくするために無茶な交配をしたり、別犬種を混ぜているのか気性も違うのを時に見かける。

今飼っている柴犬は雌だし、雌としての標準よりも小さめなのでよく「豆柴ですか」と聞かれる。「豆柴」呼ばわりするからには普通の柴犬はもっと大きいと思っているかもしれない。概して脚が長く大柄な柴系雑種と柴犬を混同しているのかもしれない。しかし前に飼っていた雌の柴犬は体重が14kg以上あったが、それでもまだ「豆柴ですか」という仁がいた。馬鹿ですか?

数年前までは「豆柴ですか」という問いに対しては「そういう犬種はありません」と確答できた。しかし JKC から仲間割れした連中が作った団体が「豆柴」の登録と血統書の発行を始めてしまった。どうしてもその団体(NPO 法人日本社会福祉愛犬協会、NPO が聞いて笑わせら)の名を憶えられないのだが、略称を KCJ と称し、仲間うちや登録犬の飼い主の間では KC と呼ばせている。KC とはイギリスの元祖ケネルクラブのことで、ろくでもない金儲け主義の団体が名乗っていい名前じゃない (JKC だってたくさんあった団体の一つに過ぎなかったのが、いち早く FCI とアフィリエイトして対外的に日本を代表する犬種登録団体みたいな顔をしているだけ) 。

公益社団法人日本犬保存会では元々その団体の登録犬に保存会での予備登録を許していたが、彼らの「豆柴」登録開始の直後の会誌でそれを取消し、絶縁した。「保存会」なのだからそんなものを許容できないのは当たり前だ。

よくよく言っておきますが、むやみに他人の犬を指して「豆柴ですか」と聞くのは、他人の腕時計を指して「どこの露店で買ったか」とか言うに等しい。気分を損ねたくなければやめてください。

「豆柴」についての日本犬保存会の見解 (秋田犬の下)

日本社会福祉愛犬協会に関するyahoo!知恵袋のページ

同上

2016/07/03

猫嫌い

母が猫嫌いだったから子供の頃に猫に間近に接したことがない。大学時代以降猫にふれる機会は時々あったが、好きにはなれない。

街猫は何といって家畜としても野生動物としても半端な存在で、ほとんどの個体は結局人間に依存し切っている癖にいうことは聞かず (人の言葉を色々憶えるだけの知能もないらしいが) 、都合の良い時だけすり寄ってくるからだ。自分で飼っている柴犬もプリミティブな犬種で様々な犬種の中では人間への精神的依存が少なく、したがって中々いうことを聞かず、清潔好きなこともあって猫っぽい犬だが。

石井桃子作「山のトムさん」には、戦後間もない当時に農家で害獣除けに飼われていた猫たちが痩せて目をギラギラさせて畑で鼠などを見張っていたことが描かれている。そういう猫たちは飼い主たちにとりほとんど必須の存在で、与えられた餌以上の仕事を果たしていた。そういう猫たちは今も田舎では仕事をしている。鼠から収穫物や家畜の飼料を守っている。英語圏では farm cat とか barn cat とか呼ばれる。

うちの犬は猫を一緒に遊べる相手とみなしていたが、相手はそうは思ってくれない。若犬時代何度も家から脱走したが、行くところは近所の餌やりをしている家と決まっていた。連れ帰って明るい場所で見ると頬に浅い傷を受けていることが二回ばかりあった。そんなこんなで成猫は恐れるようになった。こけ脅しに猫が1m突進してみせると悲鳴をあげて3m逃げる。

以前は庭に面した軒下に折り畳み式の大きなケージを置いて不在中や忙しい時は犬をそこに入れていた。そうしたとき猫は警戒して庭はさっさと通り過ぎるし、犬も平静にそれを見送っていた。しかしガラス戸の内側に犬がいるときは猫どもは無害安全とみなして図々しく振る舞い、犬も頭にきて追っ払おうとガラスに体当りを繰り返したりする。近所迷惑だが幾ら叱っても呼んでも聞かないので、最近はそうしたとき門扉の閉鎖を確認してから外に出すようにした。すると猛然と猫を追い回し、猫はみな命懸けで逃げる。捕まえたことはないが、殺しても心は全く痛まないだろう。入ってきた方が悪いんだから。

公園などで自分一人の刹那的快楽だけのために餌やりをして野良猫を無意味に増やす人たちは許せない。犬が誤食する気遣いさえなければトレーなどに放置してある猫餌に不凍液を注いで回りたいぐらい。

散歩中に猫を見つけて喜んでいる犬 (ちょっと緊張)
喜ばれている猫

2016/06/28

ラテン語

17世紀のヨーロッパでは中流以上の家庭の男の子は今の小学生くらいの年からラテン語を教わっていたらしい。ラテン語を習得すれば、それが俗語化したり、その影響を強く受けたりした言語の習得は容易になるからという理屈だった。マーク・トウェインは1836年生まれだが、その時代の米国中西部でも、上の学校に進む予定の男の子はラテン語を習っていた。18世紀にベンジャミンフランクリンは、これは無意味な風習であり、大抵の子供は難しすぎるラテン語で挫折し、結局なんの役にも立たないと言っている。

私の出た大学の学科では週一×一年間だがラテン語の授業があった。もっと上の学年であった蹄鉄実習ほどじゃないが時代遅れでほぼ無意味な科目だった。担当の教師もわかっているので薄いハードカバーの教科書は適当にして、グレゴリオ聖歌や中世ドイツの学生歌などを教えて歌わせたりした。

私は既にスペイン語を独習していたのでラテン語の初歩ではごく有利であり、ある時教科書もプリントも忘れてきて机に何も置いてなかったが、教師に「君は何も持っていないのに何でも知っているねえ」と言われたりした (教室爆笑)。教科書中ほどの動詞の活用まで授業が進めばますます調子こけただろうが、そこまで進まずに終わりになった。

読む人が読めば何学科かわかるだろうが、こんな科目は今でもあるのだろうか?

2016/06/17

ジャンクフード

近所のスーパーで犬用おやつとして売っているのは例外なくジャンクフードに類するものばかりだ。

だいたいは鷄の屑肉、例えば鷄ガラに高圧ウォータージェットを当てて落とした肉切れみたいなものやファストフード企業の基準にも引っかかるような古い肉などを挽いて結着材料や軟化剤を混ぜて成形し、着色料や犬の食欲をそそる何か魔法のような合成香料を吹き付けてある。たいていジャーキーと名付けて売っている。ペット用品店ではもう少し良いものも売っているが、自分の犬に長生きして欲しいと願う飼い主が買いたいと思うようなものは一部でしかない。

犬を飼っていないが慰みに公園などでよその犬におやつを与えて喜ばせたい人はたいてい、そういう「ジャーキー」を用意してくる。魔法の香料のおかげで犬どもは自家製の上質なおやつや鶏獣肉・臓器の素干しやフリーズドライのような高価なおやつよりもそういうジャンクを食べたがる。与える方は相手の犬が太り過ぎていようが気にかけない。しかも量が多い。断るのに、あるいは最少限度にしてもらうのに苦労する。訳を話して「お金を出して感謝されないどころか敬遠されるのは馬鹿馬鹿しいでしょう、どうかやめて下さい」と言ってみたい。

飼い主の一部にもそういうジャンクを自分の犬に与える人がいる。知り合いの犬に箱みたいに太った柴犬がいるが、飼い主は避妊手術のせいで太るのだと言っている。確かにそういう犬もいるだろうが、その人が他人の犬に物凄い勢いで「ジャーキー」を与えるところを見たことがあるから全然信用できない。

2016/06/12

「柴系雑種」

辺鄙な地方や避暑地や島嶼部では放し飼いの犬が多く、野犬の群れもいる。当局は数を抑えるために野犬の特に仔犬を箱罠などで捕らえる。成犬はそういう手段ではなかなか捕まらない。狂犬病が国内に入ったとき野犬が多いと危険なためだが、現状では犬の自然繁殖に対し後手後手であり、ほとんど無駄な努力じゃないかと思う。ともかく篤志家たちはそれを引き取っては都会に連れてきて里親探しをする。

そういう犬たちには「柴系雑種」と呼ばれるタイプが多い。彼らはほぼ立ち耳巻尾で、しかし耳は大きめで巻きは緩め、毛色は柴犬より薄い茶色が多い。薄いというか一本のトップコートの毛に白から漆黒までのグラデーションを持つことの多い和犬の毛に比べて色味に乏しい。和犬も狼に比べれば乏しいが。和犬のことを知らない人たちは彼らも柴犬だと思っていることが多い。ときどき白や白茶斑や少ないがブラック&タンもいる。そして柴犬より幾分大柄で脚がすらっとしていて眼はほとんど洋犬の眼をしている。奥眼と短めの脚は柴犬が低山の下生えをくぐって走るのに適応した結果だ。洋犬と和犬の両方を狩りに使う人いわく、洋犬は狩りの後眼に入ったゴミを取ってやるのが一苦労だが、和犬にはその必要がないと。

たぶん立ち耳や巻尾はヘテロでも発現する優勢な遺伝子により、和犬の引っ込んだ眼や柴犬の短い脚は劣勢遺伝子によるんだろう。

なお、和犬の間で交雑した犬は「和系雑種」と呼ばれる。

2016/06/08

国立医薬品食品衛生試験場

上用賀一丁目の国立医薬品食品衛生試験場は今年川崎市に移転する。跡地がどうなるかまだわからない。元は府中市に移転する予定だったが、市民が「住宅地の真ん中に危険なバイオ研究施設はいらない」とて反対運動した結果お流れになったそうだ。今の場所では病原微生物など扱わないが移転先ではできるようにするらしい。



敷地の西側は土手のような土の斜面になっていて、そこに様々な種類の桜が植えてある。ソメイヨシノ以外はまだほんの若木だが。

試験場正門斜向かいのローソンはまだフランチャイジーが決まらない。いい気味だ。場所も悪い。用賀七条と中町通りの交差点にあったファミマは遥かに好立地で客もよく入っていたのに経営者は十年目に契約を更新しなかった。跡はマイバスケットになってしまった。