2019/12/31

Raul Soares

ブラジルはミナスジェライス州のど田舎の小さい町 Raul Soares,(Google Maps、 ハウソワイスのように発音) にしばらく滞在したことがある。

ある牧場に用があって来たが、そこの牧場内の獣医師夫妻の家に泊まれるものと思っていたら、既に ABC (Associação Brasileira de Criadores: ブラジル畜産者協会) の女性検査員を泊めることになっていたので、仕方なしに町の唯一のホテルに泊まった。州都ベロオリゾンテ (Belo Holizonte) で両替しそこね、ドル以外の通貨がスッカラカンのままだった。あとで牧場主がホテル代全額を払ってくれた。サンパウロに帰る旅費の分は牧場のマネジャーにドルから両替してもらった。

ブラジルでは公定の対ドルレートの他にカンビオネグロ (Câmbio Negro) という闇レートがあるが、闇どころか毎日TVや新聞で公表・更新されており、ドルを売るには公定レートよりずっと有利。サンパウロ州立大はブラジルの大学中最難関だがその割に研究業績は芳しくなく、院生も教員もいつか米国の大学で研究したい希望があって誰でも小額でも喜んでドルを買ってくれた。当時は酷いインフレで、一週間を超える分の生活費をドルから両替するのはドライアイスを十日分買い込んで戸棚に保存するのと大差なかった。この Raul Soares 訪問時の通貨はクルザードノーボ (Cruzado Novo) で、数年前のクルザードの時代よりはインフレは改善していたが、それでもまとめてドルから両替するものではなかった。

町にはもと鉄道駅があったが鉄道は撤去され駅舎は長屋式の小さいショッピングモールのようなものになっていた。牧場には一戸建て平屋のコンピューター室があり、高卒の若い男女三~四人が働いていて、町に住んでいる彼らを送迎するフォルクスワーゲンの Kombi がホテルにも寄ってくれたので毎日それで通った。

町には日系人が自動車修理工の二人しかいないということで、珍しい日本人を見るためホテルの前には毎朝子供が集まった。

ホテルの帳場にこういう文句を印刷した小さい掛け軸が下げてあった。

O rico e o pobre são duas pessoas
O soldado protege os dois
E o operário trabalha pelos três
E o vagabundo come pelos quatro
E o advogado defende os cinco
E o juiz condena os seis
E o medico examina os sete
E o coveiro enterra os oito
E o diabo carrega os nove
E a mulher engana os dez

金持ちと貧乏人の二種類の人間がいる。
兵士はこの二者を守る。
役人はこの三者のために働く。
与太者はこの四者にたかる。
弁護士はこの五者を弁護する。
判事はこの六者を断罪する。
医者はこの七者を殺す。
墓掘りはこの八者を埋める。
悪魔はこの九者の魂を地獄に運ぶ。
女はこの十者を騙す。

砂糖黍の刈りあとで寝ころんだりしたせいで、ダニがついた。リオで開かれる学会 (The World Buiatrics congress) に来る大学の研究室の先生・OBなど日本人一行を空港で出迎えると言ってあったが間に合わず、リオのホテルのエレベーターに乗り込むところで追いついた。シャワーを浴びるごとに股ぐらからまんまるに膨らんだダニがコロコロ見つかり日本人たちを恐慌におとしいれた。