2019/11/24

数年間豚でご飯を食べていたので、生きた豚のことはわりと詳しい。

猪は地中の植物の根や根茎や昆虫などを硬い鼻の上端で掘り出して食べるように進化して来たので、頭骨後部と背中の肩甲骨あたりを結ぶ強大な筋肉群をもっている。それは食物を得、下顎から上向きに生えた牙を有効な武器として使って身を守るだけではなく、知能の進化をも支えている。人の祖先が直立歩行することによって頭脳の発達を有利にしたのと同様に、頭を支える強い筋肉は重い大脳と頭骨をよく支えるからだ。豚には少なくとも犬と同等の知能はあると言われている。

Move over Lassie: IQ tests reveal pigs can outsmart dogs and chimpanzees

しかし様々な使途のある犬と違い、豚は雌を使って地中のトリュフを探させること以外に一部が愛玩動物としてしか使われていない。もしかして番豚として働いている個体もあるかもしれないけど。不潔な環境に住むことを強いれば不潔にしているが、犬同様に清潔にしていることもできる動物である。子豚は人見知りをしない一ヶ月かそこらのものが一番かわいい。ベトナム種の豚は小さいので、それをペット用に改良したミニ豚が日本でも飼われている。支那・ベトナム種の豚の特徴として腹が大きく垂れているところはあまり格好いいとはいえない。

pet pig
ペット豚

猪の亜種である豚も鼻先で物を持ち上げる力はとても強い。木の柵などは低い横木を押し上げることで簡単に壊されてしまうし有刺鉄線も役に立たない。豚の飼育の歴史は柵を壊す豚と修理する人間の戦いの歴史だったとも言える。大規模にやっている種豚場や養豚場のあるじには柵の修理に必要な鉄棒の溶接は必須スキルである。最近は目の粗いスチールネットフェンスに電圧をかける方式が使われることが多いらしいが、豚舎内の柵や仕切りには使えない。

猪や豚特有の攻撃行動に「しゃくり」がある。敵の股ぐらに鼻先を突っ込んでひねりを加えながら勢いよくもたげることで、例えば小柄なバークシャー種などを除き成豚の体重が300kgを軽く超えるヨーロッパ種の猪や豚は、成人男性を数m投げ飛ばすばかりか牙によって大血管やその他の臓器に致命的な傷害を与えることができる。日本で養豚が今のように集約大規模化せず、沢山の農家が少数の豚を飼っていた頃、年に数人はこれで死んでいた。もちろんそういうことをするのは去勢され六ヶ月かそこらで出荷される肉豚ではなく繁殖用の種豚である。といってもまだ牙が伸びていない六ヶ月ぐらいの繁殖用の雄豚でも人をしゃくろうとする。


人がまさに投げ上げられるところ
この人は25cmの深い裂傷を負った
Image credit: news.com.au

もちろん咬みもする。怒れる雄豚に対してその辺に落ちていたナンバープレートほどの鉄板で防戦した挙げ句に手を咬まれて数針縫う怪我をし、当の豚も危険すぎるとして屠畜場送りになったことがある。

0 件のコメント:

コメントを投稿