2018/10/03

さち その2

9月15日生まれで家に来たのは12月23日だった。借りた小さいプラケンネルを提げてブリーダーの家を去る時、奥さんはケージに残った兄弟に「〇〇ちゃん、もうさっちゃんにいじめられなくて済むよ、良かったね」と言っていた。想像するに執拗にレスリングの相手を強いるさちに辟易していたらしい。

ブリーダー宅には玄関内にケージが一つだけあり、一胎の親子だけしばらくそこで暖かく過ごさせるだけで、残りの犬は成犬も幼犬も全て屋外だった。夜間は毛布を掛けてやっていたかどうかも知らない。

冬の間に戸外でシャンプーして風邪をひかせかけた。まだ犬を室内で飼うという考えはなく、春になったらケージを軒下に出して屋根をつけ、完全屋外飼いに移行するつもりだった。何しろバリケンネルはまだ買ってなく折り畳みケージが無駄に大きいので夜間古絨毯や毛布ですっかり覆っても中はかなり寒いはずだった。ブリーダーのところでは戸外と言っても兄弟と身体を寄せ合うことができたろうし。

そのうち、バリケンネルを買って室内に置いて飼い始めた。しばしばバリケンネルの底を乱暴に引っ掻いて暇をつぶしていたので、百均で音だけのクラッカーを買ってきて引っ掻き始めたらそれを鳴らしてびっくりさせて止めた。また雷を怖がらないようにと冬の間 YouTube で落雷シーンの動画を色々探してきて聴かせた。今でも雷鳴は怖がらないが、それは単に運良く屋外で近くの落雷に会ったことがないからだ。飼い主自身雷が怖いのにどうしてそんな時自身の恐怖心を犬から隠すことができようか。

桜が咲く頃ケージを軒下のブロックの上に据え、防水布の屋根を張って和犬の飼育に使われる標準的な檻の代わりにした。ケージにはちょうど合う簀の子を入れてあった。そして私の外出中や忙しい時、就寝中はケージに入れておくことにしたが、やがて面倒臭くなって夜間も家に居させることにした。蚊を防ぐ網は張らずじまいだったが夏前にニームトリーの乾燥した葉を詰めた不織布の袋を床下に沢山並べた。

家に来てから数日で散歩を始めた。数日後ブリーダーに電話して今日は2km歩いたと報告したら、まだ電柱何本分 (数字を忘れた) しか歩かしてはいけないと言われた。意味がわからず困ったが、結局日本犬の散歩は筋肉をつけるために犬に引っ張らせるのが基本であり、五ヶ月にもならない月齢で引っ張らせたら脚の形が悪くなるということらしかった。しかし洋式の飼育書に惑わされていたこともあり、引っ張らせないようにして散歩は続けた。

ほどなく小便を何回にも分けてマーキングするようになった。散歩中の臭い嗅ぎは犬の社会行動上重要な意味があると考え、かつ脳にごく近い発達した嗅覚器官を活用することは知能の発育に必ず少なからぬ良い影響があると信じ、できるだけこれを妨げなかった。今ではこれは少し後悔している。散歩中臭い嗅ぎに費やす時間が長く、また前脚二本で逆立ちして小便するのでそれの狙いをきめるのにも余計な時間がかかり、一定の運動量を満たすのにも時間がかかるからだ。

最初の二年くらいは散歩は朝晩各2kmでコースは多少変えても方向は家の東北東方面だった。仔犬の頃何度か家から脱走したので、バス通りに至る道は憶えさせたくなかったから。また他の犬と遊ばす機会が多かったから、散歩だけで運動量を稼ぐ必要がなかった。今は朝はあらゆる方向に行くし、最低でも一日に7km、時に10km以上歩く。

0 件のコメント:

コメントを投稿